3月11日。毎年この日が当たり前のようにやってくる。私は被災者ではないが、NPOふくしま学びのネットワークの一員としては福島に向かいたい気持ちでいっぱいになる。が、そんなこととは無関係に仕事の依頼も届く。愛媛県松山市にある済美平成中等教育学校からの依頼である。
何度も講演の依頼を頂戴するのにまったく日程が合わない学校もある。それを思うと、日程が合うというのはご縁があるということなのだろう。ご縁があるにも関わらず、それを無にするのは如何かと考えた。
高2になった生徒たちに講演をしてもらえないかと成谷先生から声をかけていただいた。前に訪れたのはいつだったかなと調べると昨年度だった。つまり生徒たちが高1のときに講演していることになる。福島はいつでも行けるよな。そう思って承諾した。アルク植元君が同行してくれた。
一度会っている生徒たちであるし、なにより『名スピーチリスニング』や『ユメタン』を日頃使っている。手探り状態で始める講演ではない。MCの先生の「それでは木村先生、よろしくお願いします」の直後は「元気?」から始めた。生徒たちは笑顔で頷いていた。
生徒たちは17歳である。22歳で働き始めるとすれば、ちょうど5年後である。公的な人口推計を見ると2030年の日本の人口は現在よりマイナス500万人ほど。つまり、兵庫県の人たちがそっくりそのままここからの5年間で消えることになる。その中でどういう仕事を選ぶか、どういう準備を始めておくかはけっこうな大問題である。
英語が要らない国だった日本はすでに昔の話。外国語は武器になるけれども、かといって試験対策の英語学習には意味がない。大学生になったあとは四択も下線部訳も穴埋めもない世界へ行くのだ。AIがあるから読み書きはずいぶん楽になるが、話したり聞いたりするのは自分で行わねばならない。
早い人だと大学1年生で自分の会社を立ち上げ、ビジネスを始めることだろう。起業すればわかることだが、会社を立ち上げるのは大した労力ではない。会社を続けるのが驚異的に大変なのである。ましてや日本人は右肩下がりで減っていく。徐々にではなく、ここからは一気に減っていくのである。経済が右肩上がりだった昭和時代とはなにからなにまで異なるのだ。
英語学習法は同校の先生方もしっかり指導されているはずだが、話す聞くに特化してお話をさせていただいた。阿鼻叫喚地獄になった日本で、それでもしっかりと力強く生きていける彼ら彼女らであってほしいと願う。英語は武器になる。ただし、話せるか聞けるかが問題であって、受験対策的英語力ではなんの意味も無い。
成谷先生と久門先生にはお世話になった。なんなら来年度は松山に移住して英語科教員として働いてみませんかとも言っていただいた。懇親会の参加者は10名以上となった。温かい学校だなと思いながら、22時過ぎに松山市内のホテルに戻ったが、また次年度の『ユメタン』ユーザーの生徒たちに対しても講演してほしいと依頼していただけるのではないかと期待している。
木村達哉
追記
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