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著作を贈ることに関して

2021.05.08(土) 09:00

作家は言うまでもなく、本を買っていただいてはじめて生活ができます。ですので、本来的には自分の本を誰かに贈るというのはしてはいけないのかもしれないなぁと思った時期がありました。そういうふうに考えておられる作家もいらっしゃるはずです。そして、もしかするとその方のほうが正しいのかもしれません。

実際、私が出した本を誰かに贈る場合、書店さんに行って買うことになります。まさかアルクや角川書店に、誰某に本をプレゼントしたいから1冊送ってくれなんて言えるわけがありません。そんなことを作家全員がしていると版元は倒産してしまいます。著者用の本は何冊かはいただけるのですが、それ以外は自分で買うことになります。

そういうことをご存じではない方の場合、家に腐るほど著作が溢れているんだろうなと思いこんでおられ、一冊いただけませんかなんて時として言われたりします。いや、あなたにお渡ししようと思うと、私も買わねばならないのでとお断りします。

今日は嘉数公民館の駐車場に写真のような車を見つけました。宜野湾市移動図書館です。本をこんな形でいっぱい並べて、公民館から公民館へと移動していく車型の図書館なのです。これだと人々は決められた日時に自分の住んでいる地域の公民館駐車場に行けば、本を借りることができます。とてもいいシステムですよね。

担当の方々に話しかけました。「あの、わたし物書きをやっている木村というのですが」と。「よかったら自分の本を寄贈したいんですけど」と申し上げたところ、驚くほど喜んでくださいましてね。拙著『勉強の真実』と『AI時代の読む力』、そして自分の著作ではないのですが、丸山君の『旅をする本』を宜野湾市に寄贈させていただきました。

この本はジュンク堂書店那覇店さんで買ったものです。『旅をする本』も、私が丸山君から買い上げたものです。生活費のことを考えれば、著作を贈るなんてことをすべきではないのかもしれません。実際、作家のなかには、図書館に本を入れるのは出版後1年以上経ってからにすべきだと主張されている方々もおられます。しかし、私の場合、おひとりでも多くの方に読んでいただきたいという気持ちが強く、また、夏目先生や太宰先生、遠藤先生の著作のように、私があの世に行ったあとも著作だけは生き残っていてほしいという気持ちが強いために、さらに言えばお金に無頓着な性質が災いして、著作を贈ることをよくさせていただきます。

そんな綺麗ごとでは生きていけないよという忠言や諫言を作家仲間からいただくことになるかもしれません。しかしまぁ、作家にもいろんな考え方があるということをご理解いただいて、私はこれからも自分の著作を書店さんで買う作家でいようと思っています。いや、もちろん皆さんにも!是非っ!私の著作を書店さんで買う読者であっていただければ!嬉しく思います。

しかしね、図書館でも構いませんから。是非、お読みください。
でもよかったら、書店さんでお買い求めいただいて、お読みください。

木村達哉拝