4月17日。拙宅の近くに小さい書店があったのだけれども閉店になった。子どもの頃は店主ひとりがレジに座っているだけの小さい書店がどの町にも一軒や二軒はあったのだけれど、最近では大型書店でさえもやっていくのが大変と聞く。すべては南米大陸を流れる大河のせいである。
確かに大人も子どもも本を読まなくなった。電車やバスではスマホを触る人が大半である。しかし、コロナ禍においてその売り上げを大きく伸ばしたのが書店である。仕事柄、しょっちゅう書店に足を運び、書店員さんと話をするが、コロナ禍は開店と同時に子どもたちが来てくれたんですけどねと仰る方々が多い。
読む人は読むのである。
甲子園の小さな書店が閉店となり、あとはどんなお店がテナントに入るのかなと思っていたら、なんと古本屋であった。店先には段ボール箱が何箱も置かれてあり、手書きで「1冊100円」とある。覗いてみると古い文庫ばかりではあるが、中にはおっと思うような本もある。
遠藤周作先生の『おバカさん』を見つけた。発行年月日を見ると昭和49年とある。中日ドラゴンズが20年ぶりの優勝を遂げ、長嶋茂雄が引退した年ではないか!これは買わねばならないとレジに持っていった。100円でいいんですかと聞くと、店主の女性がにっこりわらってありがとうございますと。
それ以来、この古本屋さんの前を通るたびに中に入り、小説の棚を物色してばかりいる。彼女とはずいぶん親しくなり、会話をするだに楽しい。いい小説が入ったら取っておいてくださいと言うと、お宅みたいな人はもういなくなりましたわと寂しそうに微笑まれる。聞くと、移ってくる前は雑居ビルの二階でやっておられたらしい。
閉店になった小さい書店は残念だったけれども、なんだかこの古本屋さんは潰してはならないという気持ちでいっぱいである。イベントでもすりゃ人も集まるんでっしゃろけど、私ももうこんな歳でっさかいなと仰ったので、私も物書きの端くれなのでなんかやりますかと言いたくなる気持ちをぐっとこらえた。
私ができるイベントといえば、今のところは英語や教育に関連することばかりだからだ。でも…そのうち…彼女のお役に立つ日がくればいいなと思っている。
木村達哉
追記
メールマガジン「KIMUTATSU JOURNAL」を火木土の週3通無料配信しています。読みたいという方はこちらからご登録ください。英語勉強法について、成績向上のメソッドについて、いろいろと書いています。家庭や学校、会社での会話や、学校や塾の先生方は授業での余談にお使いください。