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模試および定期考査の作問

2025.04.21(月) 10:00

4月21日。長いこと、ある会社の模試を作り続けてきた。初めて作成を依頼されてからかれこれ30年経つ。編集者が次から次へと変わり、そのたびに仕様やレベル設定について新担当者と会議を重ねながらこちらが説明するようになった。引き継ぎは行われているのだろうが、肌感覚ではわからないものだ。その点では経験がモノを言う。

年数を重ねるにつれて、作問速度が上がった。最初は一週間ほどうんうん唸ってできた問題を涙が出るほど直されたものだが、今となっては数時間もあれば数題作れるようになった。AIの力を借りると思ったほどクオリティーが高くならないのは、レベル設定がCEFRの曖昧な基準ではAIにもわからないからだろう。そこでも経験がモノを言う。

ただ、定期考査の作問のほうが難しい。模試は初見の文章を使って作るので、語彙レベルが高ければ平均点は下がり、そうでなければ上がる。一方、定期考査の場合には既に読んだり聞いたりした文章を使って作問するので、下手な問題を作ると平均点がバカみたいに上がるし、そもそも生徒にナンダコノモンダイハと笑われる。

私の場合、50分の定期考査で長文を10題ほど出して生徒から嫌がられていたが、読んだことのある文章なのだから、1題5分もあれば大丈夫だろうと思っていた。しっかりと準備をしてきた生徒らはそれでも時間が余っていたのだから、鍛えればどんどん速くなるのである。

作問レベルは、若い頃は超絶下手くそだった。やたらと下線部訳を出題したり説明せよを出題したりして、生徒から感謝されていた。全訳を読んでくれば点数が取れる(つまり英語を読み込んでこなくても点数が取れる)テストを出すと、生徒から「あの教師は楽勝」と思われる。英語の試験なのだから、それでは力がつかない。

若い先生から依頼を受けて灘校時代の定期考査を見せてくれと言われることもあるが、試験だけを見ていると「やはり灘は違う」とか「灘だからできるんだ」などと誤解されることになる。タフにタフを重ねているうちに能力がどんどん上がっていくだけで、灘でも入ってきたばかりの生徒なんて悲しいほどできないのである。

今日はある模試の締め切りであったが、すでに数日前に作り終えて送ってある。日本全国の生徒たちが受検する模試であるから気合いは十分であるが、定期考査に比べれば随分簡単な問題である。私の教え子たちが見たら、デビル木村がいつからエンジェルになったのかと驚くことだろう。

木村達哉

追記
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