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しゃぶり尽くす

2021.05.23(日) 10:00

秋田で塾や通信制高校を経営しておられる方からご連絡を頂戴しましてね。曰く、「キムタツ先生の『夢をかなえるシリーズ』を使いたおしたいので、オンラインで使い方や考え方を説明してもらえないか」とのことでした。断るわけもなく、経営者の方と役員の方にちょっとしたオンラインセミナーを開催させていただき、その場で質問を受け付けました。

先ほどもFacebookのMessengerでご連絡をいただき、小学生から高校生まで、生徒たちは『ユメタン』をはじめとする私の本を「しゃぶり尽くしています!」とのことです。著者としては、この「しゃぶり尽くす」というのが嬉しく思います。通訳の柴原先生もよくお使いになる「しゃぶり尽くす」という言葉、言葉の習得にはなくてはならない要素だからです。

送られてきた写真がこれ。

たとえば、『新ユメタン①』のユニット1で、order a top grade wineというフレーズが登場します。和訳しなさいと言われれば、きっとほとんどの方が正しく日本語に直せると思うんですね。「一番上のグレードのワインを注文する」というような意味です。

が、これをバックトランスレーションしてみましょう。「一番上のグレードのワインを注文する」を、上の英語を見ないで英作してみてください。バックトランスレーションは暗唱と似ていますが、正しく理解した英語を使って、日本語から英語に直すトレーニングです。で、正しくはorder a top grade wineなのですが、この a ですね。wineなのに(つまり液体なのに)aが付いているのは何故と思う人と、さらっと流してしまう人がいるんじゃないでしょうか。

あるいは、木村がきっと間違えたんだろう、液体に a が付くことはないのにとお思いになるかもしれませんね。でも、このフレーズはすべてネイティブチェックを2~3回通して正しいものばかりですので、間違いではありません。

辞書を引きましょう。wineを調べてみると、「等級や種類を言う場合は可算名詞」と載っています。したがって、このフレーズでは a が要るということになります。そういったことを理解したうえで、もう一度英語→日本語、そして日本語→英語に直してみましょう。

こういった勉強を通じて、英語力はどんどん上がっていきます。「しゃぶり尽くす」というのは、そういうことです。日本語の本を読む場合も同じ。僕は今、浅田次郎先生の『ブラック オア ホワイト』という小説を読んでいますが、この表現はどういう意味なんだろう、この漢字はどういう意図でお使いになったんだろう、ここの比喩は本当にこれでいいのか…などと考えながら読んでいますので、読む速度はかなり遅くなります。遅いのですが、確実に日本語の表現力は高くなっていきます。

文字通り、しゃぶり尽くしているのですね。

文章を読む際に、速く読むことはものすごく大事というか、速く読めないと大学に入ってから論文を読んだり、社会に出てからレポートや英語のメールを読んだりするのに非常に困ります。速読は大事。でも、それまでにしっかりと多くの文章を「しゃぶり尽くす」という経験をして、ゆっくりでいいので、自分の血肉となる表現をたくさん脳に刷り込んでおくことは、速読のために最も必要なことです。

秋田の先生方に教えられた子どもたちが、正しく英語力を伸ばし、将来はその力を使ってたくさんの人たちを笑顔にさせてくれることを願っております。秋田に是非おいでくださいと言われていますので、新型ウィルスが終息に向かえば(こればかり言っていますが)久しぶりに秋田に行くのもいいなと考えています。

木村達哉拝