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導入は見送られた

2021.05.29(土) 10:00

今年の受験生たちは英語外部認定試験だの、JAPAN e-Portfolioだの、はたまた二次試験で課されるから共通テストで課すことはナンセンスなはずの記述問題だの、まぁよくもこれだけ振り回されたもんだという学年になりました。挙句の果てに感染症の蔓延で、大学を9月入学にしたほうがいいかもという政治家の思い付き発言にも振り回されました。

結果的にすべての受験改革は瓦解し、センター試験が共通テストに名前を変えただけになりました。ほとんどの受験生にとっては、前年度と同じ入試となりました。今から思えば、萩生田さんの問題発言がなければ、もしかすると英語外部認定試験だってコロナ禍のなかで行われていたかもしれないわけです。本当に行われなくてよかったですね。

が、新高3生徒たちはどうなるんだろうねと、元同僚たちとよく話しておりました。またぞろほとんど意味のない英語外部認定試験が実施され、受験生の経済的負担だけが大きくなるのではないかという噂も出ていました。そうならなければいいよねと、この3月、僕がまだ灘校の職員室にいる頃に、当時の高2学年の先生方と話していたものです。

先日、英語外部認定試験の導入はなくなったと報じられました。ある時期には共通テストから英語の試験が消え、英検やGTECが代用されるという報道も一昨年ありましたが、それもどうやらなくなったようです。よかったですね。これでしっかりと腰を据えて英語を学ぶことができます。文科省はもうこれ以上、現場から乖離したプロジェクトを押し付けないでいただきたい。あと、現場をもっと勉強しなさい。

英検とかGTECって、プロセスとして利用するといいんです。今年の秋に英検2級を受検するから、それまで頑張ってねというような具合に。対策をするのではなく、普段どおりに勉強をして、受検したら合格したというような場合、ある程度の英語力に達したことがわかります。不合格になったらどこが駄目だったのかを分析し、次の検査に向けてまた勉強をリスタートさせるのです。

ところが、目標にしちゃうと英語ができなくなってしまいます。

対策ができるからです。対策ができるということは、的を絞った勉強をすることになります。英検ならできるが、それ以外の実力テストは大したことないというような子になります。対策というのはそういうことです。対策をして取得した英検2級の場合、実力的には英検3級程度なのに、対策のおかげで2級に合格したということになりかねません。一時的には嬉しいでしょうが、別の試験を受けると大したことがないのですから、悲しい気持ちになるはずです。

しかも、共通テストの場合、ほとんどの受験生は満点を狙っているはずです。200点満点を取れる受験生は少ないのですが、しかしそこを狙って勉強しているはずです。結果として160点とか170点になるかもしれないけれども。一方、英検の場合、65%で合格します。たった65%でいいのです。したがって、受検生たちは65%を取りにいきます。共通テストで65%と言うと130点ですが、130点では国公立大学に合格するのは難しいはずです。英検2級が共通テストに比べると、いかに楽ちんな検査かということがわかっていただけると思うのですが。

英検やGTECなどは悪い検査ではありません。僕も生徒たちに「受けて合格したら報告に来てね」と言っていましたし、今年中に英検2級に合格しといてねと中3のときに言っておりました。GTECは学年全体で導入しました。しかし、入試として活用するのは間違っているなと思っておりましたので、このたび、それらが導入されることはなくなったと聞き、生徒たちのためには、そして日本の英語教育のためには良かったなと胸をなでおろしております。

木村達哉拝