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主体的な生徒を育てるために

2021.08.09(月) 02:20

ネットの大学managara(マナガラ)って、スマホをスクロールしているとよく出てきませんか。「学びながら」というコンセプトで今年の4月からスタートした、新潟産業大のコースなんです。要するに通信制大学です。学費は年間30万円で、一切新潟に行く必要はなく、自分のやりたいことをやりながら大学での学びを得ることができます。多くの高校卒業生でやりたいことがある人、スポーツや芸術などほかにやりたいことがある人、阪神タイガースのブルペン捕手やJリーガーなども入学しておられます。

昨日はそのmanagara主催のイベントに登壇しました。聖光学院中高の佐藤仁志先生と一緒に、主体的な進路選択ができる生徒を育てるために、どういったことが必要なのかというコンテンツでした。非常に頭を使いながら喋りました。150名以上の方々が参加されました。ありがとうございます。

30年ほど前からでしょうか、否、もっと前からかな、面倒見のいい学校がいい学校という風潮がスタートしました。今に至ります。学校の先生方が「塾に行かなくても全部学校で面倒を見てあげるよ」と言い始めました。おかげで学校の先生方の仕事は激増し、今に至ります。教員の働き方改革ばかりが声高に叫ばれていますが、その風潮が始まる前に戻ればいいんじゃないかなぁと、僕は思っています。

で、面倒見のいい学校は、放課後に補習をしてくれるし、進路の面談の資料も取り寄せてくれるし、海外の大学に行きたい生徒がいれば一緒に調べてくれるし、なんだかいいことだらけです。しかし、そのおかげで生徒たちは自分で放課後や家庭で勉強しなくてよくなりましたし、自分で資料を取り寄せなくてもよくなりましたし、自分で調べなくてもよくなりました。つまり、思考停止していても大丈夫になりました。

つまり、主体性の真逆を進んでいるのが実情です。灘校は、補習はやりたい人が集まってきてくれればしてあげるし、資料は自分で取り寄せてくれれば多少は相談に乗ってあげるし、海外の大学に行きたいなら全部自分で調べてくれないと困るという学校です。したがって生徒たちはすべて自分でやらねばなりません。教員は16時には帰宅する人が多数派ですので、働き方改革云々という議論にはなりません。

生徒たちは自分でしっかり自分の人生ぐらい、しっかり考えるべきです。それが全てです。進路相談には乗ってあげるけれども、どの大学にどういうコースがあってどういうゼミがあってどういうことが学べるのかなんて、スマホを触る能力さえあれば自分で調べられます。教員に頼るべきではないし、教員もそんな他人の人生にあまり関与すべきではありません。

一見すると冷たいように思われるかもしれません。しかし、そうではありません。教員が時間的・精神的余裕を持ち、生徒たちを俯瞰視して的確なアドバイスを与えることにつながります。それになにより、生徒たちに主体性が育ちます。多くの学校がそうなればいいんですけどね。ただし、主体的な生徒たちが増えれば、「この先生、授業が下手だから自分で勉強しよう」と思う生徒が激増しますので、なかには困ったことになる教員も出てくるでしょう。でも、それはそれで日本の教育レベル向上につながりますので、とてもいいことだと思っております。

木村達哉拝