いろんな学校で講演をしますが、質疑応答で一番多いのが語彙力に関する質問とリスニングに関する質問です。どうすれば単語が覚えられますか、どうすれば聞き取れるようになりますか、もうこの2つの質問が大半で、残りはモチベーション管理に関するものが多いように思います。と言っても、語彙力とリスニング力はお互いに関連しあっています。リスニングが苦手なのはあまりにも単語や熟語を知らないからかもしれませんね。
それに加えて、リーディングの語彙とリスニングの語彙は異なります(というと語弊があるけど)。リーディングの場合、筆者の主張がわからないとか単語の意味が不明瞭とかいう場合、何度も目を往復させることができますし、前後から意味を類推することが(難しいけれども)できます。リスニングの場合には、目の前に話し手がいる場合は別ですが、試験のように放送でリスニングテストが行われるような場合、瞬時に意味を把握しなければなりません。この差は大きいはずです。
音を聞いて瞬時に意味を理解するクイックレスポンスができる語彙(mountain/river/student/mathematics/universeなど)ばかりのリスニング問題はかなり聞きやすいはず。一方で、意味がすぐに出てこないような単語が複数含まれていると、リスニングが難しいと感じるはずです。その点で、リスニングに通用する語彙力と言うのでしょうか、それを身につけておかねばなりません。
昭和時代の学校における英語教育は、文構造にしても意味にしても、じっくりと考えて答えを出す時代だったように思います。一方、現代はリーディングとライティングに関してはそういう部分もあるのですが、しかしリスニングとスピーキングに関しては、じっくり考えている時間がありません。クイックレスポンスができないと聞けないし話せないということになります。なので、それなりのトレーニングをしておいたほうがいいように思われます。
セミナーではそういった話をさせていただいていますし、多くの学校ではすでにリスニングやスピーキングのトレーニングをしているようですが、語彙の習得からすでにそれを意識して行っておくことが大切ではないでしょうか。読んだり聞いたりしながら語彙力を身につけていくのですが、もうひと段階がんばって、クイックレスポンスができるまで反復するのですね。
こちらの動画でも話をさせていただきました。よかったらご覧ください。考えないと出てこないような語彙では、リスニングにもスピーキングにも使えません。音を聞いたら即座に意味が思い浮かび、日本語を聞いたら即座に英語が思い浮かぶような、そういう語彙を増やしていきたいものです。
木村達哉拝