2年ぶりに石舞台古墳に行って…否、帰ってきました。僕の故郷です。育ったのは橿原市なんですけどね。実際、卒業したのは橿原市立八木中学校ですし。でもまぁ、子どもの頃から明日香村で遊んできましたし、祖父も祖母もみんながいたのが明日香村ですので、どうも明日香村に行くという言い方には違和感を覚えます。
ただ、奈良県に住んでいた頃には辛いことが多くて、良い思い出にたどり着くことができません。ぜん息の発作に苦しんだり、あるいは6000万円の借金をかかえて右往左往したり。年を取ったら故郷で余生を送る人もたくさんいらっしゃいますが、僕の場合は奈良に戻ることはないように思います。悪い場所ではないんですけどね。いや、いい場所なんですけど。
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
室生犀星の詠んだ詩をそらんじながら故郷を歩いておりました。コロナ禍もひと段落した(と思っている人たちが多い)からでしょう、2年前に帰ったときよりも随分たくさんの方々がいにしえの藤原京を楽しんでおられました。
僕はどうでしょうね。楽しいとか懐かしいとかいうよりも、なんだか海援隊の歌ではありませんけど、故郷なんかなくなっちゃったんじゃないかと思っています。でも、だからと言って感傷に浸るわけでもありません。広島にしても福島にしても山形にしても沖縄にしても、いろんなところで僕を待ってくださっている方々がいらっしゃいますからね。
これから自分の故郷になる場所を見つけながら生きるのもいいんだろうなと思っています。
木村達哉拝