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末松文科大臣の発言に思う

2022.05.24(火) 11:40

英語教育実施状況調査の結果を受けて、末松文科大臣が「コミュニケーション能力がなかなか高まっていない」と述べたと報じられています。が、そもそも英語民間試験の導入をするとかしないとか言っていたときから、英語民間試験を導入しないと発表した東京大学を下村元文科大臣が恫喝したとかしないとか報じられていたときから、英語コミュニケーション能力が高くなるなんて期待はどこを探してもなかったと思いますよ。

少なくとも僕の勉強会に参加している数千人の英語の先生方と話をしていても、英検などを導入しても儲かるのは業者だけで、英語力が身に付くなんてことはあり得ないと断言している人たちしかいませんでした。ましてや英語で授業をしても成績が上がるわけがありませんし、そんなことはもうずいぶん前にエビデンスが出ているのですから、何をかいわんやです。

英語で読む書く聞く話すの4つの技能を全部上げようとするなら、もっと真剣に取り組まないといけません。外国語の勉強を舐めてはいけません。それでなくてもAIがあるんだから英語なんて要らないんじゃないか?と気楽なことを言っている大人たちが多くて、英語勉強熱がダダ下がりの日本なんですよ。大人がそんな状態なのに子どもたちが真面目に取り組むわけがありません。

たとえば英検を導入するにしても、英検2級でいいですよなんて状況ではコミュニケーション能力が高くなるわけがありませんよね。だって、進学校では中学の間に2級を取る子たちだって少なくないんですよ。たかだか旺文社の対策問題集を買ってきて何度かやれば合格する程度の「検査」なんですよ。

現在の日本の高校生のレベルを鑑みての「2級」なんでしょうけど、それって生徒のレベルに合わせて試験を作って平均点を調整する教師と同じですよ。成績を上げるとか力を伸ばすとかじゃないんです。本当に全体のレベルを上げるなら、せめて全ての国公立大学の受験資格に英検準1級合格かGTEC for StudentsのAdvancedのGrade 6取得を入れればいいんじゃないでしょうか。

もちろん英検やGTECを受検するための費用は国が負担。公的な機関を使って受検の会場を確保し、遠隔地に住んでいる子どもたちに不利にならないようにする等など、いろんな形で資金を投入しながら国家レベルで行うようなことだと思いますけどね。

一部の先生方の負担ばかりが増えるような政策では長続きするわけがないですし、文科省が「原則としてAll English」に類するようなことを発言するたびに英語のプロの失笑がSNSに流布しますが、その現状が変化することはありません。英語力が上がらないのは、教育にお金をかけて人を育てようとしないとこうなりますよという悪い例ですね。

木村達哉拝