甲子園に住んでいますと言うと、多くの方々から「いいですねぇ」と言われます。「野球がお好きだから」というニュアンスを言外に含んでいるんだろうなと思いながら、でも中日ファンなんですよねと答えると笑顔を見せてくださいます。
球場から歩いて数分のところに居を構えているのですが、甲子園は閑静な住宅街です。タイガースの試合があるときは人が増えますが、そうは言っても球場と駅を結ぶあたりだけですからね。高校野球のときは静かです。大阪まで約10分、神戸まで約15分で行けますし、甲子園は静かで治安がいいうえに海が近いので、極めて素敵な場所です。
球場内は自由に入れます。グラウンド内には入れませんけどね。球場の南側にららぽーと甲子園があるのですが、そちらの方に行くときには球場内を通ることもよくあります。室内練習場からカキーンという音が聞こえてきます。誰かが練習しているんだなぁと、ドアが開いているときには覗いてみたりします。たいていは二軍の選手です。
(写真左側の建物が球場で、右のHANSHIN Tigersと書かれた建物が室内練習場)
多くの選手たちがドラフト会議で指名されてから数年後には解雇されます。彼らの多くは「夢がかなった!」と喜ぶはずですし、ご両親や親戚、友達、お世話になった方々も「夢がかなってよかったね!」と涙を流すことでしょう。
でも、夢がかなうってなかなか難しいんですよね。確かに「プロ野球選手になる」という夢は持っていたんでしょうけど、その夢がかなった瞬間に次の夢が、つまり「活躍して一流選手になる」という夢が、新しく出現するからです。「Aになる」程度の夢で満足していると、次の夢はまったくかないません。
それはプロ野球の球団に就職した若者だけでなく、多くの人々が経験するんじゃないでしょうかね。「灘校に入学する」とか「弁護士になる」とかいった夢もそうでしょう。こんなことなら公立に行っておけばよかったのにとか、糞の役にも立たない弁護士になっちまったとかいうことだと、本当に夢がかなったのかどうかも疑わしいところですね。
1つの夢がかなうのは素敵なことです。が、次の夢に向かって歩き出さないと、その夢は文字通り、夢の藻屑に消えてしまうことになってしまいます。夢って連鎖的につながっているんだなぁと、今日は甲子園の室内練習場で必死にバッティング練習をしている若い選手のバット音を聞きながら思っていました。
木村達哉拝