灘校に勤務しながら絵の専門学校に通っていたんです。僕はすべての生徒たちのなかで一番年上だったように思います。若い人たちに混じって、いろんなスキルを学びました。おかげで絵本が出せました。
お世話になった先生に一冊、その学校に置いていただくのに一冊、いちおうサインを入れてプレゼントしましたところ、期待以上に喜んでくださいましてね。嬉しく思いました。
「一番下手な生徒が本を出して」と申し上げると、先生が「いやいや、それは違うで」と。「絵が上手いとか下手とかを決めるのは、それを見たそれぞれの人やねん。写真のような絵を描く画家がいるけど、それなら写真でええやん、なんで絵を描いたの?ってことになる。」とおっしゃました。
絵ってのは、実物が心や脳で濾過されたものなので、三角形の太陽があってええし、鼻が2本ある紫色のゾウがいていい。木村さんの絵本の完成度は、絵が写実的じゃないからこそ高いと、読者としての僕は思う」と、最後の授業をしてくださいました。
まぁそうはいっても下手ですからね(笑)。いい気にならずに、これからもしっかり勉強していこうと思いました。先生のおかげでとりあえず一冊出すことができました。お世話になった先生に笑顔になっていただけて、本当によかったです。
木村達哉拝