暦の上ではすでに秋ですが、なんとなく今日までが夏です。明日からが秋。昨日も書いたことですが、今年の夏は暑くて発熱もしていたので、えらい数の本を読むことになりました。インドア生活万歳。
良い本についてはGOOD READSでコラムを書こうと思いながら時間があまり取れずにいます。楽しみにしてくださっている方(がいるのかどうかわからないけど)には申し訳なく思っています。
この夏に読んだ本で、一番良かったなぁと思ったのは、『海をあげる』(上間陽子著)ですね。上間さんは琉球大学教授で、社会学的・教育学的な著作もありますが、この本はひとりのウチナーンチュによる心の叫びがエッセイになったものです。
沖縄を知らない人の心にも、きっと沖縄の海や風が、気がつくと染み込んでいくはずです。そして、ページのここかしこで気がつくと涙を流している自分を発見するはずです。
『海をあげる』がノンフィクションなので、小説を一冊紹介するとすれば、『斜陽』(太宰治著)でしょうか。もう何度読んだかわかりませんが、今年は彼の母校である弘前高校で講演をし、太宰治記念館に足を運んだこともあって、再読してみました。
貴族出身の家族が、戦後の社会的・道徳的変容のなかで没落していく様子が描かれています。特に、姉が放蕩生活を送る作家の子をお腹に宿し、さらには弟が麻薬中毒になって自死していく描写は、もしかするとページを繰ることができずに「挫折」する読者がいるかもしれません。
太宰の生家は大地主ですが、GHQの農地改革によって華族制度が廃止され、彼の生家が没落した経験を背景にして書かれた太宰晩年の作品です。時代背景を知らないと、気味が悪いという印象しか抱かないかもしれません。
この夏に読んだ本については、また折を見て(いつその「折」が来るのかわからないけど)GOOD READSに書いていこうと思います。が、とりあえず2冊紹介しました。どうぞ読んでみてください。
木村達哉拝