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覚えてもすぐ忘れる

2022.09.28(水) 12:00

講演でよく申し上げるのが「東大生は自分がそれほど頭がよくないことを知っているから、何度も反復して忘れないようにする」ということです。そう言うと、多くの方々は意外な顔をされます。

誰でも忘れます。こちらの動画でも話しましたが、たとえば昨日の夕食のおかずは言えますか。一昨日のはどうでしょうか。人間の脳は「この情報いらね」と思ったらすぐにデリートボタンを押すんです。大事なのはボタンを押させないことです。

忘れようにも忘れられないものを1つ挙げてください。たとえば、九九。「ににんがし、にさんがろく」と言いながら何度も反復して覚えましたよね。また、隣の家の表札を何度も見ているうちに「うちの隣には木村さんという人が住んでいる」ということを知っています。これを必死になって覚えた人っていないんはずです。

覚えたことを忘れるのは当たり前です。脳が健康な証拠ですから喜びましょう。で、覚えたことを忘れたくないのであれば、方法は1つしかありません。動画でも話したとおりです。

その1つのことをさぼってしまうと、脳は判断します。「あ、この情報は要らないんだな」と。そして静かにデリートボタンを脳は押します。さよぉならぁという感じで、中間考査のために覚えた周期表であるとか、大化の改新で殺された人の名前とか、読んだ本で学んだ人生訓とか、すべて忘却の彼方へと押しやられてしまいます。

東大に入る子は、経験的に自分は忘れっぽいぞということを知っているわけですね。だから昨日覚えたことを今日見る、一昨日覚えて昨日見たことを今日も見る、といった具合に勉強するから東大生になれるわけで、決して「東大脳」なんてものがあるわけではないのです。

木村達哉拝