BLOG / ブログ /

  1. HOME
  2. ブログ
  3. ジアタマ

ジアタマ

2023.02.20(月) 11:00

国公立大学の個別試験まであと5日となった。一昨年、最後の教え子たちは極めて優秀な進学実績を残してくれたが、それでもまだ2年連続で受験に失敗して浪人している生徒たちがいる。早く「生徒」を卒業して「学生」になってほしいものである。

灘校に関してとんでもない質問を投げかけられることがある。「灘校生ってあれでしょ?できないできないって言っても早稲田大学ぐらいなら合格するんでしょ?」というものである。それならいいんですけどねぇと返事をするが、早稲田を舐めちゃいけない。さらに言うなら、灘の下位層を舐めてもらっちゃあ困る。

灘校生はよく「地頭がいいからやればできるようになるよ」と在学中に言われる。私はそういう台詞を聞くたびに「ジアタマってなんだ?」と思ったものである。生まれつきの頭の良さであろうか。もしそうなら、ジアタマの良い輩が、授業の単なる確認テストである中間テスト程度でどうしてとんでもない点数を取るのだろう。

もしかしたらみんなで彼らを「ジアタマが良い」と思いこもうとしているのではないかとさえ思ったことがある。しかし、もしそうだとすれば、危険この上ないことにならないか。努力をする際には、自分は地球で一番未熟なのだと思いながらやることが必要だと考えているからである。

大学時代にバンド活動をしていたときの話。ライブハウスで出会ったあるドラマーの言葉に魅了された。お名前を失念してしまったが、彼のドラムスに魅了され、ライブハウスから出る頃には誰もがそのバンドのボーカルではなく、ドラムスの彼に魔法をかけられていた。

ステージの上では、自分が地球で一番上手いのだと思いながら叩きます。練習のときには、自分が地球で一番下手くそだと思いながら叩きます。なんとかして地球一下手なドラマーから脱却するために、一生懸命に練習をします。

私は彼の言葉を忘れることができない。英語に関しても教育に関しても文章に関しても、自分が一番下手だと、自分が一番無能なんだと、思いながら勉強を続けているのは、彼の影響である。逆に人前で話すとき、英語で誰かと話すときは、日本で一番英語が話せるのだという気持ちでいる。その気持ちを作るために、トレーニングに次ぐトレーニングを日々行うことになる。

生徒たちの多くは真面目に勉強に向き合っている。中には部活動を我慢し、ひたすら人生の目標に向かって歩き続けているものもいる。しかし、だからこそ途中で息切れを起こしてしまう。勉強が手につかなくなる。長い人生なのだから、そういうこともあろう。いつから再び立ち上がって努力を始めるのかは自分で決めればよろしい。苦しいだろうが、仕事でも勉強でもなんでもそういうものである。ずっと走り続けられるランナーは存在しない。

が、もしも努力などしなくってもジアタマがいいのだから大丈夫だろう、なんとかなろだろうと思っているのであれば、人生そう甘くないぜということを、我々大人は教えねばならない。心が疲れてしまって立ち上がれない子どもたちに対する場合は別として、決して「ジアタマがいいのだから」なんて安物の笑顔を振りまいてはならないのである。

いまだに浪人している教え子たちよ、今年は必ず合格し、お世話になった両親に心を込めて「ありがとうござました」とお礼を言いなさい。そして、予備校に支払ってもらった余計な学費のぶんまで必ず親孝行しなさい。

木村達哉拝