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親に何ができるのかと問われるけれども

2023.02.24(金) 11:00

今日は「オペラ座の怪人」を観てきた。ミュージカルが好きな私にとって西宮市がいいなと思うのは、大阪の劇団四季劇場に30分もあれば行けることだ。また、大阪の文楽劇場にも近いので、人形浄瑠璃や落語を楽しむことができる。自宅の近くには能楽堂もある。

オペラやミュージカル、文楽や狂言などを観たことがないという人がそれらに興味を持つことはあり得ない。経験すればいいなと思えるはずだが、観たことがなければ興味の持ちようもない。興味がない親の子どもは経験値が低くなり、したがって学校や塾などしか知らないまま大学生になり、仕事に就き、家庭を持つ。

その子どもは自分の子どもにも舞台や伝統芸能を見せる機会を与えられない可能性が高いので、経験値の低さはどんどん再生産されていく。さまざまな機会を与えることで脳は発達するので、経験値が低いままだと成績はあまり伸びない。経験値と知識は子どもにとって極めて重要なファクターなのである。

一方、親がそういうものを子どもに見せる機会が多い家庭では、子どもが大人になったときに自分の子どもにも見せることになるので、頭の良さが代々受け継がれ、文化的な生活が再生産されていく。その意味で、親が経験値を上げることは非常に重要である。

残念ながら、私の親はそういったものを私に与えなかった。高校まで、娯楽と言えばせいぜいプロ野球の試合を観に行くことぐらい。ところが、幸いにして大学から家を出て一人暮らしを始めたので、周囲の友人に影響を受けた。美術館に行こうぜ!神戸の博物館にルーブルが来ているらしいぞ!梅田のライブハウスにスタレビが来るぞ!そういう誘いを日々受けることになった。

おかげでこういう大人になれた。

親は子どもにもっと勉強してほしいと思っているだろうが、しっかりと経験の機会を与えなければならない。でないと、いくら勉強しても知識が脳の容量に入りきらず、頭の良い子どもになり難い。仕事が忙しいのは重々承知だが、それでも子どもを育てようと思ったら少し頑張ってそれなりの機会を与えるべきだと私は考える。

灘校にいる子どもはガリベンだと思われている節がある。ところが小学校5年生や6年生の頃は塾漬けになっていた子どもでさえも、実はけっこうな経験の機会を与えられていることがわかる。受験期を迎えて親にはなにができますかと講演でよく尋ねられるが、受験直前に親にできることなど皆無。黙っていることぐらいである。むしろそれまでがポイントなのである。

最後に。
本来的には国や都道府県がそういったものを国民に提供する機会を持つよう促すべきだ。あまりにも多忙な人には芸術を楽しむ余裕がないだろう。また、家計が火の車という家庭では、数千円から1万円以上するミュージカルや舞台を何度も観に行けないのも当然だ。国民が文化的な生活を送れるように、国会議員や県会議員や市会議員には当選のことばかり考えていずに、まともに仕事をしてもらいたいものである。

木村達哉拝

追記
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