子どもを産むと奨学金の返還を一部免除してやろうと政府が言い出したそうだ。ある日突然オネエ言葉になった大学教授をはじめ、極めて多くの人々がケシカラン!と怒っている。が、おそらくもう何をどうやっても「今の政府はその程度」とみんな高をくくっているのだ。支持率から判断するに、3人に2人が不支持なのだから。
奨学金で思い出したが、私も大学在学中は日本奨学金から月額27,000円をいただいていた。一人暮らしのヒッピーで、髪を切るカネも惜しんでいたものだから、この27,000円はありがたかった。月末にカネが切れたらしょうがない、キムラ屋の前で物欲しそうな顔をし、食パンの耳を10円で分けてもらっていた。
この10円の食パン、一斤を入れる長細い袋にぎっしり入れてくだすっていたものだから、それさえあれば余裕で2週間はもった。栄養のことなど考える年齢ではない。腹が満たされればなんでもよかったのである。青いカビが生えても、そこを千切れば食えた。ネオソフトは必須アイテムではあったけれども。
社会人になって、奨学金は借金と名を変えた。が、当時は教職に就くとその借金の返済が全額免除されるという制度があった。私はご存じのとおり、奈良で教員になったものだから、約130万円の借金が消えた。私だけではなく、教員になると借金を背負わなくなるのだから、それを目当てに教員になるケシカラン輩も多かった。
退職するとまたぞろ借金はゾンビのごとく復活するが、十何年か教員を続けていれば自動的に消滅するというのだから利用しない手はない。少なくとも私の周囲の借金持ちたちは、こぞって教員になった。その借金帳消し制度は知らない間に消えたらしく、そのせいでかどうかはわからないが、教員になる学生が激減しているという。
確かに「子どもを産んだら借金の一部は消してやるよ」はヤクザな物言いのように思われるし、そもそも奨学金というのは学びたい生徒たちや学生たちのものである。また、出生率が下がっているからといって借金に目をつけるなんていうのは、なかなか下品な政策であると言わざるを得ない。
が、もう今の政府にできることはその程度なんだろう。要は「打つ手なし」なんだろうなと、寂しい思いをしながら日経新聞を眺めている。何歳で旅立つのかはわからないけれども、私が生きているうちに日本の人口は一億人を切り、多くの企業や学校は倒産していく。政治家や教員だけでなく、警察も消防も自衛隊もそのあおりを受けてなり手が激減する。政治家任せではどうしようもないが、ヒツジのようにおとなしく上に従うことを美徳と教育された我々大人たちは、誰かに従うよりほかない。そんなもんヒトに頼っていられるかよと思って生きてきた人間のみが笑顔で生き残るのだとすれば、ほとんど個人主義的無政府主義(アナーキズム)である。
木村達哉
追記
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