ありがたいことに、三省堂のリスニングの著作が増刷になった（気がする）。「気がする」と書いたのは、実は連絡がないのでわからないが、届いた書面から判断するとおそらくそういうことなんだと推察している。

アルクは増刷になるたびに連絡があるのでわかりやすいのだが、それ以外の出版社は全く連絡が入らないのでわからないのである。できることならば、他の版元も連絡をいただけるとそれなりに日々のエネルギー量がアップするのだが、そういう慣習のない出版社が多いということなんだろう。

増刷と言えば、よくサインの際にお願いされるのが「好きな言葉を書いてください」である。これが意外と困るので、そのたびに「好きな言葉」を創作することになる。作家にとって一番好きな言葉が「増刷」であることは言うまでもない。が、さすがにサインにその言葉を添えると、わくわくしながら私の手元を見つめている少年少女たちの夢をぶっ壊すことになろう。

座右の銘を書いてくださいと言われることもある。その際には「健康のためなら死ねると書くことになるが本当にいいのか？」と尋ねることになる。もっと気の利いた、たとえば「一期一会」や「臥薪嘗胆」のような言葉を求めているのだろう。こっちはそんなに真面目に生きている大人ではなく、むしろ死ぬまでに真っ当な人間になりたいと願っているタイプなのである。

このブログだけを読んでいて、私に会ったことが一度もないという向きにお願いがある。私は深く人生を考えながら生きてはきたけれども、皆さんが思っている以上にふざけた人間であって、テレビの生放送には耐えられない種類の人間なのだ。したがって、サインの際にはこれこれこういう言葉を添えてほしいと具体的に言ってはくれないか。

木村達哉

追記
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