コロナ禍も終わり、ノーマスクの人が増えてきた。地方に行くとまだまだマスク派が多いようだけれども、飛行機のCAの方々がノーマスクで接客しておられるとほっとする。実はこの文章も機内で書いているのだけれど、ANAのCAさんたちは、私の席から見える限り全員ノーマスクである。笑顔が素敵だ。変な意味ではない。
海外旅行に行ったことのある方ならご存じだろうけれども、CAさんたちだけでなく海外のお店やレストランでもあんなに笑顔を振りまいていただけることはまずない。皆さん、極めて事務的に仕事をしておられ、ぐずぐずしていると明らかに不機嫌な表情を見せる方々も多数いらっしゃる。
以前、ロンドンのパブで黒ビールとフィッシュアンドチップスを注文したときのこと。カウンターの向こうの店員(女性)からなにやら質問された。こちらは注文済み。あとはビールとフィッシュアンドチップスを受け取って支払うだけと思っていたので油断していた。聞き取れなかった。なので、Sorry?(もう一度言って)と彼女の顔を見ながら言った。彼女は英語が聞き取れなかったアジア人に対して猛烈に怒り始めた。
ご自分の大きいヒップをパンと手の平で何度か叩き、大きい声で「どこに座るのかって聞いてるんだよ!」とのたまうではないか。私は見た目にそぐわず争いを好まない性質なので、数秒間静かに彼女の顔をじっと見つめ、そして何も言わずにそのパブを出た。そんなところでビールを飲んだっておいしいはずがない。
そんな人たちばかりではないことぐらいは言われなくても重々承知。しかし、日本の場合、買ってもいないお土産屋さんの前を通るだけで「いらっしゃいませ!いかがですかぁ」と気が引けるほどの笑顔を見せていただける。笑顔、笑顔、笑顔。街は笑顔で溢れている。
店員さんがあまりに丁寧なので、逆に自分のほうがエライのだと勘違いし、不遜な態度を取る馬鹿な客も少なくはないのが日本ではあるが、そんなことを海外でやったらどえらい目に遭うのは客のほうである。
最近はなにかにつけて「自分のほうがエライのだ」と言わんがばかりに、失敗した人や笑顔を見せている人を攻撃する日本人が増えている。教師を攻撃する親、医師や看護師を攻撃する患者。ウェイターやウェイトレスや店員を攻撃する客。こんなに笑顔が溢れる素敵な国なのになんだかもったいない。
せめて自分だけはと思う。そりゃ私も人間だからイライラすることはある。が、少なくとも不必要なほど誰かを攻撃するようなことはすまい。それよりも社会的に弱い人たち、自分より立場が下のように思える人たちに対して、大して素敵ではないにしても笑顔を向けられる人間でありたい。最近、強くそう思っている。
木村達哉
追記
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