成績を上げるためにはどうすればいいのでしょうかという質問が届くたびに、いやいや何を言うとるんや、勉強すればええねやんけと呟く。コツ？そんなものはない。あると思っているのであれば、英語力がばりばりに高い人に聞いてみればよろしい。

なんかコツとかあるんすか？

そう尋ねた瞬間、一般的にそういった人たちの内心に湧いて出てくるのは、どうやってこのヒマそうな奴から逃げて、有意義で価値のある活動に戻ることができるんだろうという思いである。逃げる方法はいくつかある。「自分でまずは考えてごらん」とか「楽なのは単語と文法をさっとおさらいすることだね」とか言って、ヒマな奴を表面的に納得させることである。

コツなどない。スポーツや音楽と同じである。大谷君やイチローさんにヒットを打つ方法を高校球児が尋ねたとしたら、納得するまでひたすらバットを振れとか、基本的な素振りを365日欠かすなとかいった当たり前の返事が返ってくるのではないか。要するに、楽してヒットを打つ方法などは絶対に教えてもらえまい。なぜならそんな方法は無いからである。

村上春樹さんに、売れる小説を書くコツとか教えてもらえませんかと質問したら、以後は何をどう尋ねてもブロックされてしまうだろう。カズさんに、さくっとサッカーが上手くなるコツってありますかねと尋ねたら、彼はものすごく紳士なので、にっこり笑ってサッカーゴールに蹴り込まれるだろう。要するに、コツなど無いのだ。人さまがビビるぐらい努力する以外には。

コツは？という質問に対して英語を楽しく勉強しましょう的な回答をするのは、その教師がアマチュアだからである。プロは覚えれば覚えるほど、勉強すれば勉強するほど、自分が覚えるべきことや勉強すべきことが恐ろしいほどたくさんあることを知って絶望的な気持ちになることを知っている。そして、絶望しそうになっても、目指すべきところに向かっていく変態こそが習得への道を進むのである。

成績を上げるための道は１つしかない。勉強すること。それだけである。対策ではない。勉強をすること。そして自分の知的レベルを血の滲むような思いをしながらも上げることである。それ以外には絶対にない。

木村達哉

追記
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