大垣書店さんと言えば京都を代表する大型書店である。創業80年の老舗書店であるが、京都の人に聞くと、80年ではまだまだ老舗とは呼べないらしい。それでも京都では「大垣さん」と呼ばれているところからすれば、それだけ愛されているということなのだろう。
その大垣さんに今年も呼んでいただいた。会場には500名以上が詰めかけておられたらしいが、あまりにも多すぎて、ほとんど誰とも話さずに終わった。勿体ないなぁと思われる向きもあろうけれども、私はそもそも人が多いところは大が付くほど苦手なのである。ただ、それでも隣席がノンフィクション作家の小林文乃さんだったので、物書きは物書きらしい情報交換を楽しんだ。
日本の書店の数が激減しているのはご存じのとおり。若い人は本を読まなくなったと言われるけれども、大人も読まないのである。私が大学時代、同じ下宿にいた仲の良い友人たちは毎月50冊ほど読んでいて、お互いに読んだ本を交換していたのだが、その私たちの世代こそあまり本を読まないのである。
私たちの世代に育てられた子どもたちが本を読むわけがなく、途中から携帯電話やスマホが登場することで本離れが加速していった。それらの登場で本離れになったと思われているようだが、それは違う。本が売れなくなったのはスマホ登場よりずっと前の話である。
アメリカやイギリスに行くと日本のような大型書店を見つけるのは難しい。日本の書店文化は独特で、それを守っていきたいと思っている。ただ、本を作る側が地に足をつけた姿勢で臨まなければ、ますます書店数は減っていくだろう。雑誌や新聞の一部がネットで読めるようになった時には、間違いなくそれらは衰退していくだろうと思ったが、そのとおりになった。
我々物書きだけでなく、本のクリエイターたちは将来の日本をしっかり見据え、文化レベルの維持や向上に係わる責任を持って紙の本を創らねばならない。そして「やっぱり紙の本だね」と思ってもらえるものを創り続けねばならない。実にしょうもないハウツー本の類ばかりが書店に並ぶが、それではネットやアプリに取って代わられて当然。スマホやネットの登場で本を読まなくなったのではなく、本がつまらなくなったのである。
木村達哉
追記
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