11月29日。残念なニュースが流れてきた。千葉県教委が児童の学力向上のため(つまり、教員不足が理由ではなく)県内3つの小学校で塾講師による授業を試験的に導入し、それを報道陣に公開したというニュースである。なんとも勘違い甚だしいことだと思う。
教員不足を補うためということなら理解できる。学力向上のためということはつまり、穿って考えれば現役の教員では学力が伸びないということだろうか。私が千葉県の小学校の教員であれば指導主事なり教育長なりに敢然と抗議するだろう。
特に小学校の教員はなり手が少なく、県によっては採用試験の倍率が1.1倍や1.2倍のところが出てきている。教員の質が担保されなくなってきているのは自明で、そこに向けてそれぞれの自治体は苦労されていると聞く。その点でも今回のこれは悪手のひと言である。
案の定、児童からの声としては「担任とは違って塾の先生は追加した難しいことを言ってくれて、自分のためになるし、良かった」 「塾の先生は小ネタをはさむのが上手。(担任と)大きく違う」と報道されている。皆さんがこの担任の先生ならどういう気持ちになるだろう。私なら退職を考える。
私が教員になった頃とは違い、教育はなにも学校だけで行われているわけではない。教員志望者が塾を立ち上げたり大手の教育系企業で働き、子どもたちに接している例も極めて多い。つまり、教員志望者への門戸はかなり広いのが実情なのである。なにも小学校や中学校の教職を選ばなくても、現代では子どもたちの笑顔に十二分に触れられるのである。
企画した人物が今頃どういう気持ちでいるのかは存じ上げないが、教員不足に拍車をかけかねない企画だと思われる。大切なのは代わりに授業をする人物を探すのではなく、書類を整理するとかつまらないアンケートに記入するとか、あるいはプリントを印刷するとかといった教員の雑用を手伝ってくれる人を補充することである。本業の授業は教員がやればいいのだ。
木村達哉
追記
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