3月4日。ある方から「沖縄には進学校って無いんですよね」と聞かれた。あるといえばあるし、ないといえばないですねと答えた。的を射ない回答だと思われるだろうが、日本各地を巡っていると、進学校には2種類があることに気づく。
一般的な意味での進学校は東京大学への合格者数が多い学校である。関西の場合には京都大学が含まれることもあるが、西大和学園が東大合格者数を増やす作戦にシフトしたのを見ていただければわかるとおり、東京大学という名前は京大よりも強烈なアイコンなのである。
多くの学校がいくつかの理由で東大の合格者数を増やそうとする。私立は生徒数激減の折、東大合格者を多く出していますよと宣伝するために。公立の場合には、特にそれぞれの県のトップ校数校の東大合格者数の実績がその県の教育レベルを表していると思っている人が多数派であることを知っているからだ。県立高校から東京大学に数多く合格者を輩出している県もいくつかあり、教育県と呼ばれている。
だからおそらく私に「沖縄には進学校が無い」と仰った方はそういう学校が沖縄には無いと言いたいのだろう。その点で言えば、安定して東大に合格者を輩出している学校は無い。したがって進学校は沖縄には無い。一番手の昭和薬科大附や開邦も兵庫にくれば4番手5番手校である。
もうひとつの意味の「進学校」は、その高校から大学に合格する生徒が多いという意味で使われるものである。この場合、国公立や私立に関係なく、生徒の多くが大学を目指している学校を進学校と呼ぶ地域もある。東大やら京大やらにほとんど合格者が出ていなくても、この学校は進学校ですということになる。この意味で進学校を使っている地域があるのを知ったのは、私もこの数年である。
で、個人的にはどうでもいいと思う。
東大に行って不幸になった教え子もいれば、高卒で努力してそれなりに稼いでベンツに乗っている友人もいる。人生は18歳では終わらない。旧帝大の医学部に合格したのに自死を選んだ教え子もいるのだ。たかだか東大や京大という名前で人生は決まらない。
ただ、組織はそうは言っていられない。東大に合格者を出すことで生き永らえる学校や予備校もたくさん教育界には存在する。そういうところが私に顧問にならないかとか、講師にならないかとか、アドバイザーにならないかとかいったオファーをくださる。その点では私も片棒を担いでいる。
生徒たちが出汁に使われねばいいなと願う。本当は別の大学に行きたいのに、学校や塾の宣伝に繋がるからという理由で東大をプッシュされている生徒たちはかなり多い。東大を受けるのであれば旅費も受験料も宿泊費も出すという私立高校がある。東大の4年間の授業料を負担するという私立高校もある。
沖縄には第一の意味での進学校は無い。が、子どもたちが自分の行きたい道を選び、生きたい人生を笑顔で生きられればいいのである。そのための教育だと考える。今の沖縄では経済的な理由で大人も子どもも笑顔になれない人が増えそうな気がするが、私のボランティア活動が一助となれば。
木村達哉
追記
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