3月10日。元同僚からMessengerがあって、東大には93名が合格しましたとのこと。灘校は東大の合格者が少ないからといって管理職から苦虫を嚙み潰したような顔をされるブラックな学校ではない。が、それでも高3の担当にとって3月10日は心拍数が上がる。
受験業界においては東京大学がひとつのアイコンにはなっている。私自身が拙著『東大英語リスニング』を毎年2回から3回増刷いただいている身で、過去に東大新聞から「東大な人」にも選ばれているからあまりこういうことを書く資格はないのかもしれないが、東大という記号があまりにも持ち上げられ過ぎるのは良くないなと思っている。
東大に入ってからが勝負なのであって、東大に合格したからといってテレビに引っ張り出したり受験雑誌に取り上げたりするのもいかがかと思っているのである。以前、それについてはMIT卒の教え子である前田智大君(株式会社Mined)に聞いたことがある。
MITをはじめとするアメリカの有名大学でもこんなふうに合格者を持ち上げるものなのか?と。彼からの答えは「全然ですよ」であった。まだ何も成し遂げていない人を凄いと持ち上げることはありませんねということであった。
東大に合格した生徒たちが学生となり、そこから日本の将来を背負って立つ人材へと育っていく…のが一番いいのだろうけれども、東大に合格した、東大大学院に合格したというだけで凄い凄いと持ち上げられる風潮はいつまで続くんだろう。
合格した生徒たちにはおめでとうと声をかけるにしても、私の場合は天邪鬼なのかもしれないが、あまりちやほやしないようにしていた。他大学の合格者も然り。これからなのである。スタートラインに並んだだけなのである。
合格した生徒たちは、つまらない大学生にならないようにしよう。どこぞのつまらない塾や予備校に広告塔として駆り出され、自分を見失わないように気をつけてほしい。それよりも大学に入ってからどういうことをしてやろうかと、次の目標に向かってさっそくメモ帳を開いて計画を立て始めてほしい。
木村達哉
追記
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