3月27日。沖縄から西宮に戻った。まだ少し寒いのは寒いけれども、庭の花が咲き始めている。春を感じて心浮き立つ気持ちとはまさにこのことだろう。６日ぶりの我が家とは言え、この季節は数日で景色が変わるので好きだという人も多いのではないだろうか。

季節を感じるのは草木だけではない。人の着ている衣類が冬の黒や鼠色から明るいものに変わっている。薄黄色や肌色や水色の春コートが行き交うのを見ると、気持ちまで明るくなってくるというものだ。株価の上昇とともに財布まで温かくなればいいのだが、そうでなくてもどうやら春である。

冬が春になっても変わらないものもある。電車の中で狂人のごとき目つきでゲームに没頭する大人たちと子どもたちを見ると、せっかく車窓の外では桜が咲いているのになと思わざるを得ない。時間をどう使おうが個人の自由じゃないかと言われればそうなのだろうけれども、なんだかもったいなく感じる。

お前はどうやねんと言われそうだが、ゲーム狂人を笑えない生活である。ひねもすパソコンに向かって文字を打ち、飽いたなと思ったら本を開いて小説を読み、またパソコンのキーボードを叩き始める。季節もへったくもあったものではない。

今となっては文章を書くのが仕事なのでそれはそれでいいのだろうけれども、もう少し人間らしく季節の変化を感じながら過ごせればと思っているところである。締め切りと闘いながら、調べ物をしながら、もっといい表現が書けないかともがきながら、背中を丸めてばかりいるようでは庭の花や虫たちに笑われそうな気がする。

ところで、読んだ本の書評を書きました。『ヤンキーと地元』、『雪国』をアップしましたので、まだお読みでない方は書評コラムだけでもお読みください（こちら）。

木村達哉

追記
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