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独立心

2024.05.30(木) 11:00

5月30日。新潟県といえば米どころ酒どころである。以前、灘中学校の修学旅行で同県妙高市を訪れたとき、地元の方々からふるまっていただいた食事が極めて美味しく、新潟ってあまり来たことがないけれどもいいところだなぁと思ったものである。修学旅行中、酒は飲めなかったけれど。

今日はある高校で管理職をされている先生からご連絡を頂戴することになった。新潟県の先生である。然るべきときに、英語ではなく、進学に関する講演をということであった。新潟も他の地方と変わらず、大学進学率は上がっているけれども、難関大に進む生徒は減っているとのことであった。

東日本大震災で福島県が甚大な被害を受け、前川直哉先生を中心としてNPOふくしま学びのネットワークが立ち上がった。さまざまなコンセプトはあったのだろうけれども、そのひとつが福島の高校生たちを東大にというものであった。

東大へ行き、然るべき社会的ポジションに就いた人たちに福島を復興してもらうために人材を育てようというものであった。私は英語を担当した。先生方のご尽力で生徒たちの意識が高くなり、多い年には東京大学に20人近く合格することになった。福島県は大喜びしてくださった。

その後、景気が悪くなったりコロナ禍が社会を覆ったりした影響もあるのか、生徒たちが東京に目を向けず、地元でいい、親と一緒にいたいなどと言い始めた。親は親で子どもに近くにいてほしいと言う人たちが増えたように思う。これは福島に限った話ではない。

親子が仲良く過ごすのは否定しない。が、ひとりで生活した経験のある方々なら親子が離れて暮らすことの重要性はご理解いただけるのではないか。私もそうだった。カネには苦労したが、カネでは買えない経験をすることになった。それが今につながっている。

最近はどこへ行っても、生徒たちが自宅から通いたいと言うんですというお話を先生方から伺う。それがZ世代なのか、それとも日本全体がそういうふうに変わってしまったのかはわからないけれども、ひとりで生活する楽しさと苦しさをもっと伝えられればいいんですけどねと申し上げるしかない。

親は親でもっと子離れすべきであろう。子どもに会えなくて寂しいという書き込みが多くのSNSで為されているが、時代も変わったものだと思わざるを得ない。若い親たちはそんなふうに考えるのだなぁとは思うが、親は親、子は子である。

さて、新潟県の管理職に向けては11月に講演をすることになった。灘校生たちはあまり「自宅から」とは言わない。そもそも大学生になっても親と一緒にいたいという男子生徒が少ない雰囲気の学校ではあるが、生徒たちの独立心は極めて強い。海外なり都会なりで成功してやるぞというファイターが多いのである。

そういう子どもたちが日本中に溢れればと願っている。

木村達哉

追記
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