6月2日。パソコンの設定について書いたところ、とても親切な方々からさまざまなアドバイスをいただいている。ここをこう開いてこういうものを打ち込んで…というのは共通しているのだけれども、そして私にしてはかなり珍しく素直に、その忠言に従っているのだけれども、レッツノートは「レッツ」と言うわりにはまったく協力しようとしない。
それで思い出したことがある。ロンドンに滞在していたとき、スタッフの部屋にいた別の先生(イスラエル人だったかイタリア人だったか)に向かって「さぁ、帰ろうか」と言うつもりで、Let’s go home.と言ったのである。
するとその先生が「はい?帰る方向が違うのにどうして俺とお前が一緒に帰るんだ?」と仰った。こちらとすれば「そろそろ帰ろうぜ」という意味で気軽に使ったのだけれども、Let’sが持つ「一緒に」というニュアンスが頭から抜け落ちてしまい、なんだか変な空気に包まれることになった。
言うとすれば、It’s time to go home now.だった。
外国語をやっているとこういうミスをする。そのときのように誰かが訂正してくれればいいのだけれども、スルーされることの方が多い。この日本人、あまり英語ができないんだなぁと思われたままになっているケースである。
これがまずいのは、文法なんて多少できなくても通じたと思い込むことである。そりゃ通じたと言えば通じたんだろうけれども、実は相手にどう思われているかわからない。皆さんの学校や職場に外国人がいて、突然「さぁ、一緒にあなたの家に帰りましょう」と言われたら驚くはずである。いや、あなたはあなたの家に帰ればいいと、相手にせずに静かに立ち去る人もいるだろう。
英語と日本語の単純な変換は危険である。常に言葉にはニュアンスが宿る。例えば、「オファーを断る」場合、refuseやdeclineなどの動詞を使うことになるが、どれを使っても同じというわけではない。Will youとCan youも違う。使い方によっては喧嘩になったり誤解されたりすることも多い。
海外にいて学ぶ場合、子どもが親に訂正されながら言語の力を上げるのと同様、その言語ネイティブから訂正してもらえることは多い。自分は大したことがないから間違っていたら直してねと頼んでおけば。ところが日本にいて外国語を学ぶ場合はそういうわけにはいかない。
丹念に英英辞典を開き、それぞれのニュアンスを1つずつ学んでいくしかないのである。単語集や熟語集は確かに有益で便利なのだけれども、ニュアンスまではなかなか習得しづらい。その点でいえば、昭和時代の単語集がなかった時代のほうが着実な英語学習はできていたのかもしれないなと、Let’s Noteを見ながら思っていた次第である。
木村達哉
追記
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