7月16日。あまりネットニュースを読み過ぎると頭が悪くなるような気がして、途中でスマホを切ることがある。今ならもう終わってしまった都知事選で負けた方々へのバッシングと言うのかなんと言うのかわからないニュースなどはその類である。取材したわけではなく、SNSで拾った声を単に掲載しているだけのニュース。下品な言葉遣い。読むに堪えない。
くだらないニュースに限って日本語の間違いが目立つ。「波乱万丈」と「破天荒」を同義で使っていたり、先日は「おっしゃられる」という奇々怪々な日本語を造っておられたり。アルバイトのウェブライターが書いているのだろうが、中にはそうでない週刊誌のウェブサイトもある。出版社勤務の、大学を出た執筆者が書いているのであれば、かなりレベルの低い人を採用するしかなかったのかなと思わざるを得ない。他山の石としよう。
英語畑にいると英語の勉強についてよく尋ねられる。そのたびに、日本語は大丈夫なんですかとお聞きする。相手の日本語力を疑っているわけではない。日本語でも文章が読めないし書けないのに、外国語で読んだり書いたりできるわけがない。日本語は読めないのですが、フランス語なら読めるんですよと言う人にお会いしたことがない。フランス生活がかなり長い場合は別だろうけれど。
自分は日本語力があると思っている人が多い。が、上に述べたとおり、意外なほどお出来にならない方が多い。興味のないことは聞いていられず、すぐに眠くなってしまうという人もいる。人前で話をする際に「えー」だの「あー」だの「はい!」だのが多くて、オマエハナニヲシャベットルンダという人も少なくない。日本語の技能が低い証左である。
たかだか英語の検査や四択式のテスト程度であれば知識を増やすことで乗り切ることも不可能ではなかろう。が、外国語を使ってそれなりに生きていってやろうとすれば、人間それなりの力が必要で、特に母語でしっかりと考える力がなによりも大切なのである。
考えるのには言語を使う。言語の力が低いと考える力も低くなるのは当然である。こんなことを書くと年寄りのぼやきのように思われるかもしれないが、私の周囲にいる英語力が極めて高い人たちは日本語の知識にも長けていて、日々読書に勤しんでおられる。言葉の使用に美意識と価値観とこだわりがある。しっかりと考えておられる。そしてそれは英語にも反映される。
英語力は英語の試験で点数化できるようなものではない。が、少なくともしっかりと外国語を使って生きていってやろうと思いながら勉強しておられる方々には、日本語もそれと同じぐらいの熱量で勉強されるといいですよと申し上げたい。
木村達哉
追記
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