7月19日。灘校の元同僚の井上君から連絡をもらった。8月に教職員恒例のビアガーデン飲み会をやるんだけど来ませんかということだった。退職したというのに温かい職場である。昨年も参加させてもらったのだが、沖縄の活動について聞きたいと私の周囲に集まった先生方もいらっしゃった。

灘校は小学生たちにとってはもしかしたら超難関大学に行くためのプロセスだと考えている向きもあろうが、入ってみればわかる。そういう人たちも含めて、人間ってのは自由に生きていかねばならないのだということを教えてくれる場所である。東大だとか何大だとかいったことは人生には関係ないんだよと。したがって、差別に対する意識は極めて高い。

自分とは違う人を見て差別するような人間は、いくらたかだか偏差値が高くても優秀な人間ではないと教えられる。自分とは違う人を見たら、こういう考え方もあるのか、社会にはこういう人もいるのか、知らなかったから覚えておこう、いったん受け入れよう、自分の人生に役立てようと考えるべきだと教え込まれる。

私は早期退職という道を選んだけれども、決して灘校が窮屈だったからだとか、ましてや糞みたいな同僚がいたからだとかいう理由ではない。本を書いて生きる時間を増やそうと思ったからである。そんな私は拍手で見送ってくれた灘校には心から感謝しているし、生きている限りはあの拍手に報いねばなるまいと思っている。

８月に元同僚たちに会うのが楽しみだ。なかには退職後に灘校に入った先生方もおられるのだろうけれども、そういう方々も含めて笑顔を交わしあいたい。場所が芦屋ということなので、市長になった教え子の話も出るかもしれないな。現在の灘校譚を楽しみにしておこう。

木村達哉

追記
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