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私も本を書いてみたいという方へ

2024.07.21(日) 09:10

7月21日。ある方から書籍執筆の相談を受けた。どうやって書けばいいですかと言っているうちは絶対に書けないので、まずはパソコンなり原稿用紙なりレポート用紙なり帳面なりを取り出して書き始めることである。1文字目を書いたら次は2文字目、それができれば3文字目に移るのである。

それを12万回、つまり12万字ほど重ねれば本になる。ただそれだけ。難しいことは何もない。紙と書くものがあれば成り立つ仕事である。パソコンにしたって大した仕様が必要なのではない。テキストが打てるものであればまったく問題ない。字の色や形は編集者が考えるのであって、我々作家は常にベタ打ちである。

沖縄の歴史について書いてやろう。言語の語族について書いてやろう。アムハラ語の習得法について書いてやろう。そういったテーマを決めたら、次は台割である。どういう200ページにするのかを決める。言うなれば目次である。また、それをどういった方々に読んでいただこうとするのか、つまり読者のターゲット層を定めねばならない。読者を意識せずに書いていてもメッセージ性に欠けた文章となり、読めたものではなくなる。

あまり文章を書いたことがない方の場合、その文章の表現力は極めて低いはずだ。しかし、そんなことは二の次三の次。優秀な編集者があなたの下手な文章をしっかりと校正してくれるはずである。大事なのは12万字を書き貫くことなのだ。朋友のMr. Evineとよく話すのだけれど、楽しいのは書き始めだけ。そのうち辛くなってくる。

脳の処理速度と文章を書き進める速度が違うことが最大の原因のように思われる。こういうことを書こうと脳は考える。ところが実際に文章にするとなるとレトリックやら句読点の位置やらが気になって執筆速度が脳に追い付かない。どうしてこんなにうまく書けないんだという気持ちが強くなる。パソコンを閉じる。目を閉じる。嗚呼、苦しい。

企画が通っている本の場合、編集者から「まだか」という催促がやおら届き始める。また届いた、ああ今日も届いている、そういった気持ちが更に手の速度を緩める。サザエさん一家のお隣に住む伊佐坂先生の場合には編集者のノリスケ氏が直接原稿を取りに伺うので、そんなに待たせるとまずいなという気持ちになるのだろうが、現代はメールでのやり取りが一般的。無機質なメールの文面に攻撃されながら執筆しなければならないのだ。あなたは文章力の高い編集者からのメールに耐えられるだろうか。いや、遅いお前が悪いのだという声がアルクや三省堂から聞こえるが気にすまい。

こんな本を書きたいんですよという企画書を作るのは基本中の基本だが、本を書いたことのない方の企画書がとおることはほぼない。それよりも200ページ書いてみたので見てくださいと原稿を直接持っていくことだ。これはうちでは出せないねと言われるはずだ。が、根気よく別の版元に持っていけばよろしい。100社回って駄目なら自費出版すればいいのである。

間違っても本を売ろうと考えてはならない。売れるわけがないからだ。あなたの本は間違いなく売れない。買ってくれる人がいるとすればご家族か、相当近い友達のみである。SNSにアップすればヴーチャル友達が「買います」というコメントをくれるだろう。しかし、100人がコメントをしても実際に買ってくれるのはそのうちの一人か二人である。間違いない。

肉体は滅びようともその本だけは遺したいと願って書くのである。印税などは振り込まれなくていいのだ。万一振り込まれることがあれば、あなたはかなりラッキーである。おぉ!私の本を買う人がいらっしゃったのか!と喜び、その何百円か何千円かを晩ご飯に使うのである。カネは一瞬で消えるが、喜びは消えない。本を書くというのはそういうものなのである。

木村達哉

追記
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