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台風の沖縄で思い出したのは

2024.07.23(火) 09:40

7月23日。メルマガに書いたとおり、今は沖縄にいる。台風が近づいている沖縄では、散歩中にさくらがまっすぐ歩けないぐらいの風が吹いているけれど、雨は降っていない。観光客も予定を変更せざるを得ないんじゃないかと思われるが、私も借りている部屋の大家さんとの約束(ゴルフ)が延期になりそうだ。

台風の沖縄は久しぶりである。学生時代、下宿の男ばかりで夏休みに来沖したとき、5日滞在していたうちの4日間が台風でものすごい雨だった。当時は高速道路がなく、58号線を辺戸岬まで北上し、ものすごい風の中を与論島に向かってなにやら叫び、帰りは太平洋側を走って民宿まで帰った。

その手のドライブで盛り上がるのは最初だけ。途中で風景にも嵐にもすっかり飽いてきた男たち。飯を食おうにもあちらこちらの食堂は閉まっている。高いA&Wに入って食いたくもないハンバーガーばかり腹に詰め込んでいた。前から手の平サイズの亀が飛んできてフロントガラスに激突したのを面白がったぐらいで、面白くもなんともなかった。

若い人たちには信じられないだろうが、当時の天気予報はテレビとラジオ頼みだった。明日はどうやら晴れるというNHKニュースに小躍りしながら最終日の夜は国際通りに繰り出した。今なら東京資本のお店が並ぶ国際通りには行かないだろうが、なにしろ私的な旅行で沖縄に行くのは初めてだったので知識がなかった。雨の国際通りは人通りがまばら。つまらなかった。

当時の私はがっかりしてばかりいた。第一志望の大学に蹴られ、自分としては小学生の頃から持ち続けてきた夢に破れてしまったという思いを強く持っていたのである。どうしてこんなところにいるんだろう。いったいなにをやっているんだろう。ちっとも面白くない。そんなことばかり考えていた。

迎えた最終日。帰る日だけが晴れだった。さほど暑くない。今の那覇のようにあんなに大きなマンションやホテルはなかった。空が青く、そして広かった。海よりも空に、風に、心を奪われた。貧乏旅行だったが、帰りは唯一の贅沢で飛行機だった。機内から見える沖縄にまた来るからねと話しかけた。私が19の夏だから、41年前。

もう一度、何から始めていいのかわからないけど頑張ってみようかなと思い始めていたのは、沖縄の民宿に缶詰めだったからだろう。最後の日に太陽が私の再出発を祝ってくれているような気がしたのも、沖縄のチカラなのかもしれない。

あの最終日がなかったらこんなにも沖縄に来なかったかもしれないな。そんなことを土砂降りの雨が窓を叩いている今、うなだれるハイビスカスを見ながら思っている。タイムマシンで19歳の自分に会えるなら、第一志望の大学には行けなかったけれど結構良い人生を還暦になったら迎えるから、あまりがっかりしないで前向きに生きなさいと言ってあげたい。

木村達哉

追記
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