7月29日。以前訪問したある学校の生徒から頂戴した質問に「今までで一番幸せだったことと一番つらかったこと」というのがあった。こんなことを聞いてその生徒はどうするんだろうと思ったが、那覇の小学生からの「年収はどれぐらいですか」にも正直に答えた私なので、それにも思いつくまま答えた。皆さんならなんと答えるだろうか。
一番幸せだったのは、やはり自分の子どもたちの誕生だろう。息子と娘とそして91冊の著作たち。今年の10月には92冊目と93冊目も生まれる。息子と娘が誕生したときの喜びは言うまでもないが、42歳のときに初めて誕生した自分の著作がジュンク堂書店三宮店で平積みになっているのを見たときは号泣した。周囲の人たちはきっと驚いただろうけど。
一番つらかったのは、いろいろありすぎて絞れないけれど、やはり父親が「死んでくる」と電話をかけてきたときではないか。遊び人でどうしようもない父ではあったけれど、年一度の家族旅行に連れていってくれたり、大学入学の際には大阪市平野区のスナックを貸しきって宴会を開いてくれた。それが「死んでくる」の電話だけでサヨナラというのはやはりつらい。
その後、借金が1億9000万、私が背負う連帯保証人の額が6000万だと判明したときは、そりゃつらくなかったわけはないけれども、それよりも1本の電話のほうがつらかった。一睡もできなかった。死んだ保険料で借金を返してくれと電話口で言った父ではあったが、死にきれずに出てきたときはむしろほっとした。
という話を講演の質疑応答で話したが、生徒たちはシーンとなって聞いていた。生きているといろんな波はやってくる。カネが足りないという波、信じていた人に裏切られたという波、自分の力ではどうしようもない波、波、波。そのたびに凹んでいたのでは到底生きていけないので、強い精神を身に纏って切り抜けていってくださいと話した。
英語勉強法に関する質問が多いのだけれど、たまにこういう人生譚につながる質問もある。質問の手が上がらない学校もあって、それはなかなか寂しいものだけれど、事前質問を集めておいてくださったその学校には感謝している。それにしても、さすがに還暦を過ぎたので、もうこれ以上の波は勘弁してもらいたい。
木村達哉
追記
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