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平敷屋エイサーと少子化と保存と

2024.08.21(水) 09:00

8月21日。昨日は平敷屋エイサーを保存するためにご尽力の竹下さんという方にお会いした。奥様はジャズフルート奏者の西仲美咲さん。存じ上げなかったのだけれど、平敷屋エイサーは数ある沖縄のエイサーのひとつで、東と西に分かれていたものが2023年度に統一することを決定したとのことであった。

ひとつの集落に二つの青年会があり、東西に分かれて異なる踊りと音楽で競い合ってきた平敷屋エイサー。県内最古とも言われるほど長い歴史があるエイサーがどうして形を変えることになったのか。9年前には東西それぞれ60人ずついたメンバーが、今では東西を合わせても50人程度しかいないからだ。原因は言うに及ばず少子化である。

竹下さん、ご自身で平敷屋エイサーのDVDを作って各ご家庭に無償で配布されているという。自腹を切って作られたとのことだったので、下品な関西人はその自費製作にいくらかかったのかを尋ねてみた。病身でけっこうな医療費がかかるというのに、日本人の平均年収に少し足りないぐらいのお金をご自分でお出しになっていることがわかった。

琉球新報の報道によると、なかにはもう踊りたくないというメンバーもおられるとのことである。今までは東西が競って自分たちの踊りを大切にしてきたのに、統一によって東のメンバーは西の、西のメンバーは東の、エイサーをも踊らねばならないのである。それぞれの踊りを見てみたが、勇壮な東に対して優美な西というところか。メンバーも複雑な思いだろう。

自費でDVDを作ってご家庭に配布することでメンバーを増やし、これからも平敷屋エイサーを保存していこうとする竹下さんの情熱は感動に値する。が、こういう活動こそ公費を使わねばならないのではあるまいか。聞くと、沖縄県に二度申請したけれど、二度とも断られましたと竹下さんはうつむいておられた。

大阪の人形浄瑠璃への補助金カットの件もそうだが、そりゃ箱モノや道路をきれいにすることも便利で大切なんだろうけれど、文化に税金を使って伝統を遺していくことも重要だ。生活に必要だから公費を投入し、不必要なものには投入しないという考えが日本を覆っているように思うが、文化は私たちの心を豊かにするのに最も必要ではないだろうか。

大英博物館やルーブル美術館で入場料が無料だったことを思い出した。カネのない芸術家から入場料を取るような国ではないと、受付の近くにいた係員がおっしゃっていたが、日本の政治家にはもっと芸術や文化にも目を向けてほしい。いま生きている我々が全員死に絶えた百年後の日本人から、なんて無機質な国にしてくれたんだと言われないためにも。

木村達哉

追記
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