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学研HDが桐原書店を買収という報道に触れて

2024.09.02(月) 08:40

9月2日。学研ホールディングスが桐原書店を買収というニュースに驚く日となった。以前から桐原書店の経営については危惧している人が多かったが、学研HDの傘下に入ることになった。英語に関して言えば、以前は使っている人が多かったネクステなど、大ヒット商品もある。

買収というと言葉は悪く聞こえるけれど、少なくとも倒産ではないのだ。したがって社員も著者も作品も(学研HD次第ではあるけれど)当面は守られることになる。海外のファンドに買収されるよりはよほど好意的な対応になるのではないか。私がもし桐原から本を出しているとすれば、なにより著作がどうなるのか気になるところである。

若い人たちはご存じないと思うが、駸々堂という書店および出版社があった。あったと書いているぐらいだから、20世紀最後の年に倒産した京都の老舗出版社である。書店は梅田の地下など繁華街にあり、学生時代はよく立ち寄っていた。書店は関西一円で広く展開し、学習参考書の出版も行っておられたのだけれど、21世紀を見ることなく姿を消した。

それと同時に同社から出ていた、私の大好きだった英語の本たちも消えた。堅い本が多かったけれども、しっかりと学べば着実に英語力が身につく本が多かったのに。そうか、出版社が消えるというのはつまり本が消えることなんだなと、非常に残念に思ったのを覚えている。

学研HDと桐原書店のようなことは、本がほとんど売れない日本ではこの先も起こるだろう。すでに自転車操業になっている出版社もいくつか耳にしているが、この出版社がと思うような企業が傾き始めている。人口減少という理由もあるだろうが、知的筋肉に対する欲求減退こそ大きい原因ではないだろうか。

子どもの頃から街のなかにある小さい本屋が大好きだった。ふらっと入っては冷やかした。古本屋も然り。宝物を発見したときは、その値段にかかわらず奥のレジへと持っていった。帰ってから読むつもりが、途中で喫茶店に入り、我を忘れて本に没入した。著者との会話を楽しんだ。

今ではその本の役割をスマホが担っている。時代といえば時代なのだろうけれど。そういえば、灘校の自由英作文で50年後の人たちに向けてタイムカプセルを埋めることになったが、あなたは何を入れるかという問題を課したことがある。生徒のひとりが「紙の本」と書いた。理由には「50年後には無いはずだから」とあった。

デジタル化の波は避けられないけれど、なんでもかんでもDXというのも違うように思う。スマホやPCの世界は確かに便利ではある。紙の本のようにページが色褪せたり破れたり折れたりすることはない。しかし、本当にそれでいいのかな。私などは紙の本がなくなったら読書量が激減するだろう古いタイプの人間だから余計に紙の本と出版社や書店を大切にしたいし、それらを大切にする人たちと付き合っていきたい。

木村達哉

追記
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