11月6日。報道によると学習塾の倒産件数が過去最多水準になりそうである。全国展開していた個別指導塾スタンダードや教育春秋社など、法人化していた大きい塾の負債額が大きいが、小さな個人経営塾を含めるとけっこうな数の閉塾が見込まれるとのことである。
少子化の影響ですでにいくつもの高校や大学で生徒や学生の募集停止を発表しているのである。塾や予備校が安泰なわけがない。早稲田大学のように推薦枠を入学者の6割に拡大したり、東北大学のように学力を測る個別入試を近い将来行わないと発表したりする大学が増えれば、この傾向はさらに大きくなっていくだろう。
進学校から東大などの大学に入る学生たちがやたらと教育産業に首を突っ込み、自分も塾を経営してみようといきり立つが、すでに教育産業は冬の時代である。なにせ「お客様」が急激に減少しているのである。塾にインバウンドもへったくれもない以上、新規参入はかなり危険である。私の教え子たちもおそらく苦労しているだろう。
しかし、個人塾のニーズにはもっと目を向けていい。学校という場所は全体に教えざるを得ないので、どうしても合わない生徒が出てくる。低学年に指導する際には全体の偏差値40から45ぐらいに対して授業を行うが、そうするとトップは暇をする。高学年になると今度はトップに合わせて授業を行うが、そうすると下がついてこれなくなる。
灘校時代は個人経営の塾や家庭教師をやっている教え子たちに、授業で暇をするトップ層やついてこれない下位層をよろしく頼むと連絡をしたものである。教材はこれとこれ。A君はトップ層なので、1つ上の学年の内容を教えてやってくれ。B君は中学時代にサボったので、中2あたりからやってくれ。タイアップして連絡を取り合うとさらに有効である。
大箱に入って教える形式の予備校の場合、生徒側からすればダブルスクールになっているわけで、学校と予備校のどちらもダブルで合わないとなると悲惨である。自習の習慣がついている生徒は自分でできるが、教えてもらわないとという子は先生から教えてもらってはじめて伸びるのである。自習は大事だけれど。
その点で個人塾は生き残ってほしい。言うまでもなく、とんでもない塾長がやっているような塾は淘汰されてほしいけれど、一生懸命に生徒たち児童たちのために東奔西走している熱心な指導者たちの塾は潰れてほしくない。
木村達哉
追記
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