11月17日。兵庫県知事選が行われた。アメリカではトランプ氏が勝ち、日本では斎藤氏が勝った。トランプ氏は前回の大統領選後にワシントンの暴動を扇動したかどで非難された。斎藤氏の場合、パワハラを自らがお認めになっていた上に、今回の選挙でも支援者の何名かが逮捕されていた。
暴力的な印象を与えている人たちがそれでも勝ったことは興味深い。人々は何かに飢えているように思える。足掻いているようにも見える。私は政治の中核にいないし、そもそも作家というのは人間を見るのが仕事なので選挙結果についてはとやかく書かないが、現代の社会の動きをじっと見ると人間が見えてくる。
今年のヨーロッパ議会では、極右政党から史上最多の議員が選出されたのはご存じのとおり。結果的に大混乱に陥り、マクロン大統領(フランス)は自国の解散総選挙を宣言。第1回投票では極右政党が勝利した。オランダやイタリアでも右派の政権が発足し、ヨーロッパでは多くの国々が右派、むしろ極右が国を率いている。
右だの左だの、どうでもいいじゃないかと考えるのは日本人の平和ボケであって、世界の潮流を見るとボケてばかりはいられない。イギリスでは労働党政権が14年ぶりに発足したが、保守党政権に対する強い不満が噴出した形となっている。右派だらけのヨーロッパで、なぜイギリスだけが左派なのか。明らかに原因はブレグジットへの不満だ。
さて、日本では自民党と公明党、そして日本維新の会が議席を減らした。与党2党が依然として与党のままでいるので、世界的に見ればまだ日本は保守が強い国なのだろうけれども、国民の不満は噴出の一歩手前にあるように見える。立憲民主党と国民民主党が支持を大きく伸ばしているのは、イギリスの労働党躍進に通じるように思える。
SNSが勝ったとか既存メディアが負けたとかいった見方はあまりにも浅い。確かに選挙の勝ち負けに戦略が大きく影響するのは言うまでもないけれど、戦略のバックにあるのは人間の気持ち、特に普段の生活への思いである。たかだか選挙の結果だけを画一的に見ていてもあまり意味はない。
それにしても、現在の人間の動きはなかなか興味深い。50年後はさすがに生きていないだろうけれど、子どもたちは今と完全に違う価値観の社会を生きることになるだろう。それはAIとかネットとかそういうものの影響ではない。具体的には書かないけれど、個で生きていける強さと能力を身につけておかないと生きていけないと思われる。
木村達哉
追記
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