12月18日。朝はまだ真っ暗な空から白い雪がちらちら落ちてくる秋田駅前をホテルからバス停まで歩いた。ローリングスーツケースが雪のために転がらず、大変往生した。ようやっとたどり着いたバス停でひとりぽつんと座っていた。次に秋田に来るのはいつかな。ぼんやりと空を見上げていた。昨日は楽しかったな。
空港に着いてコンビニのイートインでパンをかじりながら暖をとった。周囲はサラリーマン風の二人づれが1組いるのを除くとみんなひとり。それぞれがスマホや新聞を手にパンやおにぎりを口に放り込んでいる。みんな疲れて見える。向こうから私を見てもそう感じるのかもしれない。疲れていないことをアピールするかのように背筋を伸ばし、目を大きく見開いた。
植元君はまだホテルで寝ているかな。彼のことだから、起きたらメッセージをくれるだろうな。講演の写真をまだもらっていないな。そんなことを考えながら二階の土産物コーナーへ。あきた犬のボールペンを買い、早々に搭乗口へと進んだ。まだ外は暗く、闇の底だけが白かった。『雪国』の冒頭を思い出していた。
飛行機では珍しく眠ることができた。私は新幹線でも飛行機でも眠ることができず、たいていはキーボードを叩くか、それに飽いたら小説を読んでいる。雪の歩道を秋田駅まで歩いた疲れもあったのだろう。あっという間に伊丹空港に着陸した。なんだか雪が無いのが不思議な気がした。寒いはずが暖かく感じた。
1月生まれなのに寒いのは得意じゃないけれど、北海道や秋田はなんだかんだで冬がいい。10月に本荘高校で講演をしたときには雪がなかったのが、なんだか不自然な気がした。秋田は雪が似合うと書くと秋田の方々は嫌がるだろうか。沖縄が海だとすると、秋田は雪である。
来年も呼んでいただけることを期待しよう。また条件つきフライトになるのかもしれないけれど、それはそれで緊張感があっていい。雪の秋田は素敵だ。
木村達哉
追記
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