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言葉に敏感になる

2025.01.02(木) 09:00

1月2日。言葉には過敏になっておくぐらいでちょうどいいのではないかと思っている。年が明けると「元旦」という言葉を使うことが多いが、この「旦」は水平線(地平線)から日が昇る様子を表している漢字である。したがって、「元旦」は1月1日の朝、それも比較的早い時間を意味する言葉である。

広辞苑には「元旦」が1月1日の意味として使われていることが書かれてはいるが、それは誤用が一般化したのである。たとえば「おっしゃられる」という言葉はないが、多くの人が「おっしゃる」を「おっしゃられる」と言っているうちに「別にどっちでもいいじゃねえか」と言う言葉に鈍感な人が出てきて、一般化していくのと同じであろう。

ただ、こちらは英語にしても日本語にしても30年以上言葉を扱っている。「別にどっちでも」というわけにはいかない。「元旦は何をされているのですか」と1月2日に言われると、「1月1日の朝に何をしているのですかと現在進行形で翌日に聞かれても困るな」と思うクソメンドウな人間なのである。

本とSNSの違いとして大きいのは言葉の使い方にある。本の場合、言葉の専門家である物書きと編集者によるせめぎ合いで研ぎ澄まされた言葉を使って編まれる。一方、SNSの場合には、言葉の使い方にこだわっている人はほとんどいない。したがって、生徒が「SNSで文章を読んでいます」と言っても、日本語の力は伸びないはずである。

辞書を読んだり本や新聞を読んだりしているうちに語彙力は上がる。脳内の言葉が毎日どんどん増える。使わないとまた消えていくので、自分でも文章を書いたり話したりしながら増やした言葉が消えないように努力する。そうしているうちに、どんな文章でもだいたい読めるようになってくる。

国語力を上げるために本を読めとよく言われる。間違いではないが、たかだか10冊や20冊を読んだ程度で日本語力が上がることはない。普段から言葉に敏感になり、誰かが使った文章中に知らない言葉があれば意味を調べて抜き書きしたり使ったりして自分のものにする不断の努力を忘れないようにすることだ。

最近の大学入試では、国語や英語だけでなく数学や理科でも読む力が要求されているが、いいことである。さすがに高3生徒が今から本を読み始めても泥縄だけれども、高1や高2の生徒が日本語の力を上げたいと思うなら、なにより言葉に敏感になることが大切である。元旦という言葉ひとつとっても、どういう意味なんだろうと調べることだ。

木村達哉

追記
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