出版社 | 新潮文庫 |
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著者 | ハリエット・ジェイコブズ |
1862年、アメリカで極めて大きな社会的動きがありました。奴隷制度が廃止されたのです。奴隷解放宣言以前のアメリカ南部では、当たり前のように黒人が白人たちに仕えていました。有色人種に対する差別は今もなお続いていますが、制度のうえではその年に廃止になりました。
奴隷というとどういうイメージを抱きますか。奴隷市場で黒人たちが白人で買われて家に連れてこられます。黒人奴隷に子どもができると、生まれた瞬間から世襲的に奴隷となります。彼らは白人のもとでさまざまな労働に従事することになるのですが、女性奴隷の場合には性的虐待を受けることにもなります。子どもが転売されることもあります。
好色な医師フリントの奴隷となった美少女リンダが主人公です。彼の卑劣な虐待に苦しむ彼女は自由を掴むため、他の白人男性の子を身篭ることを、そして逃亡することを、堅く決意します。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認されてきましたが、出版から126年後に実話と証明されるやいなや米国でベストセラーになりました。読みながら心が苦しくなるかもしれませんが、是非お読みください。